口コミは顧客や消費者の判断に依存するため、企業側でコントロールするのは難しい面があります。
マーケティングに口コミを活用するには、顧客のメリットや消費者心理をうまく捉えて、有益な口コミを集めることが重要です。
この記事では、口コミ(クチコミ)のメリットや活用法(マーケティング手法)について解説します。
口コミをマーケティングに活かしたいと考える企業のマーケティング担当者や、経営者の方の関心にフォーカスした内容です。
口コミ(クチコミ)とは消費者の声
口コミ(クチコミ)とは、消費者の声または消費者同士の口頭や投稿によって行われるコミュニケーションを指し、VOC(Voice of customer)と呼ばれることもあります。
「口頭でのコミュニケーション」を表す略語、または「マスコミ」に似せて考えられた言葉です。
単なる口伝えの意味だけでなく、商品・サービスの感想や評価でもあります。
ネット上では、口コミサイト・SNS・ブログなどに寄せられる投稿が口コミの実体で、消費者が誰でも繰り返し見られるため、商品・サービスの売上に影響を与えます。
口コミとレビューの違いは作成者
商品・サービスに関するネット上の口コミは、購入者・利用者ではない人が投稿する噂話も含まれます。
一方、レビューは商品・サービスを購入・利用した本人が体験を元に書くものです。つまり投稿の作成者が限定された「ユーザーの声」を指します。
書いた人の動機が比較的明確で、具体性があり、信頼性が高い投稿です。
どちらも公に向けて公開されていて、メリット・デメリットは似通っており、企業にとって有意義なものもあれば不都合なものもあります。
口コミマーケティングはなぜ注目されている?
パソコンやスマートフォンが普及した現代では、テレビコマーシャルのような広告のほかにも、インターネットを通して商品の情報を手に入れられるようになりました。
実際に、通信販売の商品ページ・口コミサイト・比較サイト・SNS・動画投稿サイトなど情報を得られる媒体が多様化しています。
特に、SNS上で影響力がある人物が発信する口コミやリアリティのある口コミは信頼感があるため、紹介された商品は人気を博します。
個人が発信するSNSの口コミは、商品を売るために提供される企業の情報と異なり、信憑性が高いため利用者に支持されるのです。
口コミ(クチコミ)で得られるマーケティング上の4つのメリット
マーケティングにおける口コミ(クチコミ)のメリットは、消費者の行動に委ねられるがゆえに、予想を超える反響を得られる可能性があり、広告のような制約がないという点です。
このほかにも、企業が主導する広告では得られない、さまざまなメリットがあります。
この章では、口コミで得られるメリットについて解説します。
幅広くリーチができる
口コミの良し悪しに関わらず、口コミが伝えられることそのものが、商品・サービスの認知につながります。
消費者や購入者が自発的に無制限の発信を行うため、反響が大きい場合には広く拡散されます。
結果は予測できませんが、企業が意図的にバズを仕掛けることは可能です。
基本的にリーチのための費用はかからないため、消費者から自主的に拡散された場合には、最大限にコストパフォーマンスの高いリーチ手段として働きます。
良い口コミが商品・サービスの信頼感を上げる
消費者が第三者に知らせたい、という動機を持って伝えるものが口コミであり、企業が関与しないメッセージです。
したがって、良い評価がある場合には、他の消費者は自分と同じ立場の人の感想だと認識して、その口コミに信頼感を持ちます。
これにより、企業が意図せずとも商品・サービスの価値が勝手に上がるのです。認知が広がるだけでなく、信頼感も高まります。
信頼性の高い広告を配信しているのと同様か、それ以上の効果が期待できます。
良い口コミは広告に依存しなくて済む
消費者の自発的な口コミは無償の行動のため、企業が広告費を負担する必要がありません。
口コミですでに評価されている商品・サービスはアピールしやすく、消費者の認知や評価を得るまでの広告費が不要です。
このように、口コミには広告に依存せずに販促を行えるメリットがありますが、すでに認知されていることを前提にすれば、その先のメリットを広告で訴求することも可能です。
企業側が気が付かない利点・欠点を見つけられる
アンケートを実施すればサービスに対する感想・不満・評価が得られます。それに対して、口コミは、サービスに関することだけでない率直で多様な消費者の声を拾えます。
企業が予想しない感想や意見が得られる場合もあり、商品・サービスあるいは自社について、気付かない利点・欠点を知るきっかけになります。
それらを商品開発やサービスの向上に活かし、さらなる利点のアピールと欠点の改善・アップデートにつなげることで価値を高められます。
口コミ(クチコミ)で企業が注意する3つのポイント
消費者による自主的な口コミ(クチコミ)の拡散は、大きなメリットがあると同時に、悪い反響が広がると大きな損失を被る場合があります。
企業はそのことに注視し、必要な対策・予防を行う必要があります。
この章では、企業が気を付けるべきポイントについて解説します。
炎上を防止する
炎上の原因として、企業側に原因があるケースは以下の通りです。
- ・企業が運営するSNSでの担当者の発言
・口コミサイト等での担当者の返信
これらのケースでは、炎上を未然に防ぐことが可能です。
偏見や差別につながる言葉を選んでいないか、返信では相手の気持ちに寄り添っているかなどの注意点を組織内で共有する必要があります。
投稿前に上司がチェックすることや、そうした基本動作をマニュアル化して担当者に徹底するなどリスクマネジメントを行うようにしましょう。
炎上した際の対応方針を予め決めておくことも、早期の沈静化に有効です。
風評を監視する
消費者がサービスに対して感じた悪い印象が、不都合な口コミとして拡散されるケースです。
また、意図して悪い噂が流布されるケースなど、企業側でのコントロールが難しいものが風評です。
これをレピュテーションリスクといいます。
- ・口コミサイトやSNS・掲示板での投稿の監視
・シェアが多い投稿の注視
・人気ブロガー・インフルエンサーなど影響力が強い人の投稿を注視
・監視ツールを使用した効率的な運用
これらの方法で継続的な監視を続けて、風評被害を未然に防ぐ措置をとることが重要です。
口コミ活用の方法に問題がないかを精査する
企業が意図的に口コミ拡散を狙う場合は、具体的な方法に問題がないかを精査します。
ブロガーやインフルエンサーを使って仕掛ける口コミには、それらに敏感な消費者がいることを認識しておきましょう。
仮にステルスマーケティングが消費者に指摘され発覚した場合、それが広く拡散されれば炎上につながります。
そのため、コンテンツにプロモーションという旨の表記を行うように、広告活動と明示するようインフルエンサーとの間で取り決めます。
口コミから集客までの流れを考えておく
企画を作る際に注目したい点は、口コミを閲覧して商品に興味をもった新規顧客やリピーターを次の行動へ誘導することです。
情報を拡散し周知するだけでは、マーケティングは成功しません。
商品をただ知ってもらうだけではなく、次の行動、すなわち購買意欲を高め購入してもらうことで初めて、口コミを十分に活用できたといえます。
口コミを見た人が購入へのアクションを起こしやすいように、Webサイトやアプリの操作性を簡易にし、商品やサービスの詳細ページへストレスなく遷移できるよう導線を設計することがポイントです。
許諾関係は徹底する
商品利用者の口コミを自社ウェブサイトに掲載する場合は、口コミの権利関係を明らかにしましょう。
口コミにも著作権が発生するため、許可なく利用すれば著作権法の侵害に当たる恐れがあります。
二次活用する旨を利用者にあらかじめ伝えてからレビューを収集したり、利用者と個別に連絡を取り許可を得てから掲載することが重要です。
許諾関係の徹底は口コミ利用に際して必須であるため、法律上の責任が伴うことを常に念頭に置いてマーケティング戦略を練りましょう。
口コミマーケティングの手法
口コミはさまざまな媒体で掲載されており、口コミを利用したマーケティング方法は数多く存在します。
SNSでの評判を参考に商品を購入し、感想を投稿した経験があるユーザーも多いでしょう。
ここからは、口コミマーケティングとしてよく用いられている手法を2種類紹介します。
関連記事として、下記の記事もご覧ください。
関連記事:口コミやレビューをマーケティングに生かし、成果を上げるためのポイントを解説
SNSで情報を発信する
口コミマーケティングの最たる手法が「SNSキャンペーン」です。
SNSは利用者が多く、情報の拡散や商品の周知を期待できます。
特に、InstagramやX(旧Twitter)などの拡散性に優れるSNSはマーケティングに用いやすいため、さまざまな企業で利用されています。
また、SNSキャンペーンでは、商品やサービスの感想、名称(商品名・サービス名)をSNSに投稿してもらい、利用者に商品への興味を持ってもらうことが重要です。
またインフルエンサーに商品やサービスを提供してSNSで紹介してもらう方法もあります。
SNSごとに利用者層が違うため、商品やキャンペーンのターゲットに応じた媒体を選択し、有効なキャンペーンを行いましょう。
ファンマーケティングを徹底する
近年よく利用されている口コミマーケティングの手法が「インフルエンサーによるファンマーケティング」です。
SNSのフォロワー数やファンの多い有名なインフルエンサーに商品のレビューをしてもらうことで情報を拡散し、商品の話題性を高めます。
ファン層へ強烈な印象を確実に与えられ、また、商品を購入したファンが口コミを発信することも期待できるでしょう。
インフルエンサーの評判が企業のイメージにも影響するため人選には慎重さを求められますが、ファン層への影響・情報の拡散・商品の話題性などの効果をもたらします。
悪い口コミ(レビュー)への対応で評価を得る2つの方法
悪い口コミは、クレームやそれに伴う感情、同業者等による意図的な嫌がらせなどがあります。
いずれの場合も適切な対応が重要で、クレームは新たな評価に変わることが確認されています。
このことは、顧客のクレームとリピートとの相関を示した「グッドマンの法則」が参考になるでしょう。
グッドマンの法則とは、クレーム対応を丁寧に行うことで売上を大きく向上させられるという法則です。詳しくは、以下の記事で解説しています。
関連記事:グッドマンの法則とは?レビューの活用で顧客満足度UP!VOCを用いた事例と併せて解説
悪い評価をサービスの向上につなげる
商品・サービスに対する悪い評価は、顧客からの指摘と捉えて真摯に対応しましょう。
口コミの投稿者は、サービスや企業に対する期待があるからこそ、あえて悪い評価をしているという可能性があります。
悪い評価の原因を究明し、商品・サービス・サポートへフィードバックして改善を実施します。
マーケティング手法に問題があると考えられる場合には、別の手法をとるなど見直しを行いましょう。
感情的な口コミ(レビュー)に丁寧に対応する
きっかけが何であれ、一旦悪くなった感情は理屈では抑えられない面があります。
感情を伴った悪い口コミは拡散しやすく、企業イメージを損なう方向に働きます。
口コミに返信する場合は、相手の状況への理解・共感・感謝を示しましょう。主張や反論を控え、公の立場を意識した節度ある返答をします。
企業として今後にどのように生かすかを伝えることも有効です。
そのような企業側の態度は、多くの人の目に留まるため、消費者の評価に影響します。
良い口コミ(レビュー)を獲得する方法3選
良い口コミを獲得するには、当然ながら良い商品・サービスを提供する必要があります。
サポートによって商品・サービスの至らない点を補うことも大切です。
マーケティングの観点では、モールや口コミサイトのようにやらせやサクラが横行する場では、良い口コミを探すことは効果的ではありません。
消費者にとって信頼性が高いオフィシャルサイトやSNS上に、消費者や顧客が口コミしやすく、チェックの可能な手段を用意しましょう。
直接顧客に口コミをお願いする
ストレートに顧客に口コミをお願いする方法があります。
商品・サービスを提供したタイミングで、口頭やチラシ(QRコード)・メールでの案内を行い、自社サイトやSNSでのレビューをお願いするものです。
たとえば、Amazonでは出店者のオプションとして、購入後にAmazonから顧客に対してレビューを依頼するサービスを利用できますが、同様の手法は自社サイトにも導入可能です。
サイトや店舗において商品・サービスの利用者に対し、プレゼントなどのインセンティブ付きで口コミをお願いすると、より強い動機になります。
SNSアカウントで口コミを促す
自社SNSアカウントで口コミを募集することも有効な方法です。
- ・アカウントのハッシュタグを作成する
・特典付きキャンペーンのハッシュタグを作成する
・キャンペーンの際にハッシュタグを付けた投稿を促す
そのほか、顧客や消費者が投稿した自社や商品・サービスに関する良い投稿を、自社アカウントでシェアすることも効果的です。
サンプルを提供してモニターしてもらう
サンプルを提供する方法は、商品を使用した相手からの口コミが得られるため、非常に効果的です。
サンプルを提供する際は、まず、モニターサイトに募集案件を載せる、または自社のファンサイトで企画するなどして商品モニターを募集します。
モニターが集まれば、応募者から口コミを得たい客層のユーザーに商品を提供し、使用感などを自社や口コミのサイト、SNSに投稿してもらう方法です。
口コミ投稿を条件として、サンプルを提供し、謝礼や特典を与えます。
口コミマーケティングに関する具体的な戦略2選
口コミマーケティングは、一般的な広告とは異なり消費者に信頼されやすい口コミを利用するところが特長です。
口コミマーケティングには、意図的に口コミを発生させる戦略(バズ・マーケティング)と、自然に発生する口コミを促す戦略(バイラル・マーケティング)があります。
バズ・マーケティング|意図的に口コミを発生させる
バズ(Buzz)とは「がやがや言う」「うわさする」といった意味があり、にわかに騒がしくなるようなイメージで名付けられたマーケティング用語です。
SNSで企業が主体となって意図的に投稿を拡散させ、リーチを広げる手法です。
この方法ではインフルエンサーやブログ運営者の力を借りて口コミを企画・発信し、売上や知名度の向上を狙います。
企画内容やインフルエンサーに依存しますが、後述のバイラル・マーケティングよりも積極的に口コミを作り出せる点がメリットとなります。
バイラル・マーケティング|自然に口コミが発生する
バイラル(viral)とは「ウイルス(が原因)の」という意味で、近年ではコンピュータ・ウイルスに関して使われたり、ウイルスのように「口コミが拡散する」という意味で用いられたりしています。
消費者が商品・サービスの情報をシェアしたいと思う気持ちを活用する手法で、具体的には商品やサービスの紹介ページにSNSの共有ボタンを設置するなどの方法を用います。
消費者に自発的な発信を行ってもらう都合上、バズ・マーケティングに比べて消極的な方法となりますが、コストがかからない点と、完全に消費者目線であることがメリットです。
まとめ
口コミ(クチコミ)をマーケティングで活用するメリットは大きく、絶大な効果が見込めます。
口コミは消費者にとって信頼しやすい情報であるとともに、企業にとっては不都合な情報もありリスクとなります。
良い口コミを発生させ、リスクを抑えることが、口コミマーケティングの成功につながるでしょう。
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